大型倒産から100億円企業へ 愛情で「普通の人を優秀に育てる」 マッチングワールド 町田 博
マッチングワールド 町田 博 (画像=経済界)

在庫を匿名で売買できる「M-マッチングシステム」を展開するマッチングワールド。町田博社長は以前、吃音のため「営業に向いていない」と言われ、FAX営業に活路を見いだした。その経験から導いた独自の人材育成術とは。(雑誌『経済界』2022年9月号より)

人のぬくもりを感じるマッチングシステム

余剰在庫を必要在庫へ。「M-マッチングシステム」は、企業の抱える余剰在庫を必要な在庫へ変えるサービスだ。企業同士の直接取引の仲介をすることがメーンで、商材は、ゲームやトレーディングカードなどのアミューズメント関連商品が中心となっている。ITの仕組みと人力でマッチングするのが特徴だ。

例えば、在庫品の入庫時と出庫時には検品を行い、品質保証している。他にはあまりない仕組みだ。また、売り手も買い手も匿名で取り引きできる点も特徴の一つ。在庫処分は企業にとってリスクが高い。倒産の疑いを掛けられてしまうからだ。

「匿名性を担保してあげて初めて在庫処分はできるのです」(町田氏)

一般的なマッチングサービスは、なるべく省人化・自動化することでコスト低減を考える。マッチングワールドがそうでないのは、町田氏の過去に苦い経験があったからだ。1983年にテレビゲームの販売会社を設立した時は、ゲームのブームに乗って絶好調。6年間で年商200億円に達したが、慢心から46億円相当の余剰在庫を抱えて倒産する。

「この経験が、その後に創業したマッチングワールドから現在までつながっています。在庫を抱えるリスク、マッチングサービスの必要性を誰よりも熟知しているつもりです」

M-マッチングシステムは、過去の苦い経験を生かし「人のぬくもりを感じるシステム」として完成されている。そのシステムを支えているのは、各企業を担当する専属営業だ。

原石の良い面を見てチャンスを与え続ける

町田氏はかつての営業時代、当時の上司から吃音を理由に「営業職に向いていない」と指摘された。そこで、FAX営業という誰もやっていなかった新手法で自らの道を開拓。その後、営業本部長にまで上り詰めたのだ。このときの経験が、現在の人材育成に引き継がれている。

「人材育成は、愛ですね(笑)。人の悪い面より、良い面を見たい。弱点があれば、その弱点をどう生かそうかと考えます。最初は全員素人で、プロの人はいません。当社のような小さな会社に、最初から完成された優秀な社員は入社してきません。だから私は、真面目で普通の人を優秀な人になるよう育てるのが基本方針です。例えば、当社の海外事業部のトップは大人しく寡黙な女性です」

一般的に海外事業部のトップと聞けば、押し出しの強いマッチョなタイプを想像しがちだ。

「彼女は几帳面で真面目で、芯が強い。その持ち味を生かして、海外事業のトップとしてメンバーを束ねています。私も彼女ならできると信頼していますし、任せています。任せないと伸びませんからね」

こんな逸話がある。町田氏がマッチングワールドの前身マチダを設立した際に「雇ってほしい」とかつての社員たちが訪ねてきたという。新会社を設立したと聞きつけて、町田氏の下で仕事をしたいと駆け付けたのだ。町田氏が社員に信頼を寄せている分、社員からも厚い信頼を得ているのが分かる。

自ら背中を見せ続けること、良い部分を見て適材適所に伸ばすこと、そして任せることが肝要だという。

「本当の姿を見せて、本音で社員と向き合う。思いやりこそが真の社員教育だと考えています。社員に喜びを与えるのは社長の仕事です。いかに社員が過ごしやすい場を提供するかが大事だと考えています。部長クラスのメンバーに叱ることはあっても、一般社員を叱ることはありません。社員は生かすもので、潰すものではないですから。原石にチャンスを与えて、成長してもらいます。社員にはいろんなタイプがいます。出会いこそが人生の1ページだと考えていますから、すべての出会いを大事にしたい。自分の娘や息子のように接して、長期でその人を生かせる方向性が根付くまで教えます」

日本では毎年、22兆円相当もの余剰在庫が処分されているという。その中でたった1%を減らすだけでも2千億円相当。100億円を売り上げてもまだまだ余地はあるようだ。ゲームなどアミューズメント関連商品だけではなく、今後は他の商材にも横展開していく予定だという。

また、小規模・個人事業主向けの事業資金調達支援サービス「マッチングペイ」を今後の主力事業の一つと位置付けており、現在、拡大中だ。2021年には初のリアル店舗「まちキャラ秋葉原店」をオープンし、メーカーと消費者の接点を広げている。ここではバンダイ、スクエア・エニックスなどメーカーごとに棚を設け、メーカーイチ押し商品をメーンに展示することで、〝メーカーに寄り添った〟店舗となっている。

来季以降は売り上げ100億円を、さらには25年の上場を目指している。相乗効果の見込める企業とM&Aを通じて規模を拡大する予定だそうだ。

「社員には家族があり、生活の安定が必要です。そのためにも、しっかりした会社を残し、22年間一緒にやってきた社員への恩返しのために上場を目指します。社員には情と愛を持って恩を返していきます」

会社概要
設立 2001年6月
資本金 1億円
本社 東京都中央区
従業員数 57人(2022年5月現在)
事業内容 在庫マッチング業
https://matching-world.com/